【2014年筑波大学付属駒場中学校入試問題「社会」問3】

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劇作家の早坂暁さんは、世界一の戦艦大和に乗りたい一心で、1945年4月海軍兵学校に入学しました。しかしながら、入学式の際伝達された海軍兵学校校長の訓辞は「君たちは戦後の日本のために集められた。戦後の日本のために懸命に勉強しろ」だったそうです。早坂さん達は「日本には不沈戦艦大和があります」と食い下がりましたが、「沈まない船は船とは言わない。大和はもう無残に沈んだ」との返答に、人生最大の衝撃を受けたといいます。戦争が終わり、故郷へ帰る途中の8月21日、早坂さんは広島で一夜を明かしていますが、その夜雨がしとしと降り、真っ暗な中で見たのは、何百何千という青い火、死体から出たリンが燃える恐ろしい光景でした。
広島や長崎への原爆投下だけではありませんでした。第二次世界大戦後も、核のもたらす深刻な被害に、日本は幾度も直面してきました。広島や長崎への原爆投下の一年後の1946年7月1日、史上4番目の原爆の爆発が中部太平洋マーシャル諸島のビキニ環礁でおこされましたが、この水域での1954年3月1日の水爆実験では、マグロ漁船第五福竜丸が被ばくしました。この時、ビキニ環礁から180㎞離れたロンゲラップ島民も「死の灰」が及びました。アメリカとソ連との核兵器開発競争は、世界各地に放射能を降らすこととなりました。
1986年4月26日におこったチェルノブイリ原発事故は、世界に大きな衝撃をあたえました。IAEA(国際原子力機関)が定めた国際原子力事象評価尺度で、「深刻な事故」としてのレベル7に位置づけられるこの原発事故から、改めて核エネルギーの平和的利用の難しさを実感することとなりました。石棺と呼ばれるコンクリートで覆われたチェルノブイリ4号炉は、現在も密閉のための補強工事を続けています。
国際原子力事業評価尺度は、原子力発電所や原子力関連施設で起こった事故やトラブルの影響の深刻さを判断する基準です。レベルは8段階に分かれ、レベル7は最も重大な事故を指します。実は日本では、国際原子力事象評価尺度に従う事象や事故が度々起こっているのです。1995年の高速増殖炉「もんじゅ」でのナトリウム漏れは「逸脱」と評価されレベル1、1997年東海村の再処理施設火災爆発は「重大な異常事象」としてレベル3、1999年東海村JCO臨界事故は「所外への大きなリスク(危険)を伴わない事故」としてレベル4、2011年東日本大震災による女川原発2号機の浸水は「異常事象」としてレベル2、そして福島第1原子力発電所事故は、チェルノブイリ事故に匹敵する「深刻な事故」となりました。2013年にも、東海村原子力機構での放射性物質漏れで30人が被ばくする事故が起こっています。福島第1原発の貯蔵タンクなどからの汚染水漏れは深刻で、レベル3とされています。福島第1原発事故では1号機から4号機まで。実に4基の施設が深刻な事態となっているのはよく知られている事実です。しかも、福島第1原発には、他にも5号機と6号機の2基の原発が存在しています。もし福島第1原発が収拾のつかない事態に陥れば、近くには福島第2原発もあり、それらの原子力施設の維持が困難となり、日本列島のかなりの部分を放棄することになるかもしれません。だから、福島第1原発の事故の収束と廃炉への作業はとても重要な課題となっているのです。
30年以上も前になりますが、1979年アメリカのスリーマイル島で原発事故が起きました。スリーマイル島原発2号機で、原子炉の過熱を抑える冷却水の給水ポンプの故障が生じ、いくつかの人為的ミスが重なったために、原子炉が空焚き状態となり、炉心溶融つまり核燃料棒が溶け落ちるメルトダウンが生じたのです。福島第1原発事故と比較すると、スリーマイル島原発事故は、水素爆発による建屋の崩落や格納容器にまで達する炉心溶融もなく、メルトダウンは原子炉内部に留まるものでした。スリーマイル島原発事故は重大な事故ではありましたが、国際原子力事業評価尺度としては、「深刻な事故」、「大事故」に次ぐ、「所外へのリスク(危険)を伴う事故」として評価されています。このスリーマイル島原発2号機の廃炉の作業は、1980年からはじまり、原発を覆う建屋内の放射能の除去に時間がかかったため、原子炉内の燃料の取り出しは事故6年後にはじまり、すべての燃料を取り出したのは事故から11年後のことでした。事故の処理はそれで終わったわけではありません。その後原子炉の放射能汚染除去がなされ、汚染の除去が確認できたのは1993年でした。それ以降現在は監視中で、1号機とともに2034年に廃炉を完了させる予定となっています。福島第1原発廃炉への作業には、こうしたスリーマイル島原発の廃炉体験が生かされていくことが期待されています。福島第1原発では、建屋内燃料プールに保存された燃料棒の取り出しが、廃炉に向けての最初の大きな課題になっています。
スリーマイル島原発2号機内で回収された核燃料は、研究用サンプルとして日本でも保存されていますが、廃炉の過程で、原発の使用済み核燃料や廃炉にともなう核廃棄物をどのように保管していくのかは重大な問題となってきています。日本には、使用済み核燃料を再処理したプルトニウムが44トン保管されています。これは長崎に落とされた原爆5千発分以上に相当します。アメリカが軍事用に生産したプルトニウムの総量は100トンとされていますが、今後10年間で日本のプルトニウムの保有量も100トンに達するだろうと試算されています。その上に廃炉にともなう大量の核のゴミが排出され、その処理に直面しなければならないのです。また日本はIAEAの保障措置国でもあります。保障措置というのは、核拡散つまり核兵器の保有が広がらないようにするために、原子力の開発がIAEAの監視下におかれることをいいます。日本には250か所以上の原子力関係の査察対象施設があり、20名以上のIAEAの査察官が常駐しています。
1984年、国内の原発施設が攻撃を受けた場合、どのような事態がおこるのかについて、外務省は研究を行いました。1981年にイスラエルがイラクの研究用原子炉施設を爆撃した事件を受けての研究でしたが、「原子炉格納容器が大型爆弾で爆撃され、全電源及び冷却機能を喪失した」場合の被害想定では、最大で1万8000人の急性死亡、住めなくなる地域は周囲30キロ圏内、最大で87キロ圏内にもなるだろうとの結果が示されたのです。東日本大震災による原発事故と同じように、冷却機能を維持するための全電源が失われる事故は、ミサイルなどの攻撃によっても生じるのです。
平和的利用を目指しても、国際政治の展開しだいによっては、開発された核エネルギーは破壊的な力を発揮することになります。また政府の姿勢によっては、保有している核エネルギーは核兵器にも転用されてしまうのです。福島第1原発事故は、第二次世界大戦の敗北に次ぐ第二の敗戦といってもよいかもしれません。その意味で福島原発事故後を生きるというのは、新たな戦後を生きていくのと同じ意味を持っています。日本国憲法をつくり、憲法の基本原理として国民主権に基づいて国会の代表を選び、平和主義によるガイ子制作の下、基本的人権の尊重をめざし、私たちは第二次世界大戦後の世界を歩みはじめました。今、それと同じ思いを持って歩む努力が必要とされています。
http://www.yotsuyaotsuka.com/kaitou-sokuhou/asahi/2014_tsukukoma_social_q.pdf
2014年筑波大学付属駒場中学校入試問題

国会事故調報告は以下のように記載してます。
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◆福島原子力発電所事故は終わっていない。
これは世界の原子力の歴史に残る大事故であり、科学技術先進国の一つである日本で起きたことに世界中の人々は驚愕した。世界が注目する中、日本政府と東京電力の事故対応の模様は、日本が抱えている根本的な問題を露呈することとなった。

◆想定できたはずの事故がなぜ起こったのか。政界、官界、財界が一体となり、国策として共通の目標に向かって進む中、複雑に絡まった『規制の虜(Regulatory Capture)』が生まれた。そこには、ほぼ50年にわたる一党支配と、新卒一括採用、年功序列、終身雇用といった官と財の際立った組織構造と、それを当然と考える日本人の「思いこみ(マインドセット)」があった。経済成長に伴い、「自信」は次第に「おごり、慢心」に変わり始めた。入社や入省年次で上り詰める「単線路線のエリート」たちにとって、前例を踏襲すること、組織の利益を守ることは、重要な使命となった。この使命は、国民の命を守ることよりも優先され、世界の安全に対する動向を知りながらも、それらに目を向けず安全対策は先送りされた。

◆「変われなかった」ことで、起きてしまった今回の大事故に、日本は今後どう対応し、どう変わっていくのか。これを、世界は厳しく注視している。この経験を私たちは無駄にしてはならない。国民の生活を守れなかった政府をはじめ、原子力関係諸機関、社会構造や日本人の「思いこみ(マインドセット)」を抜本的に改革し、この国の信頼を立て直す機会は今しかない。

◆ この提言の実現に向けた第一歩を踏み出すことは、この事故によって、日本が失った世界からの信用を取り戻し、国家に対する国民の信頼を回復するための必要条件であると確信する。

◆ここにある提言を一歩一歩着実に実行し、不断の改革の努力を尽くすことこそが、国民から未来を託された国会議員、国権の最高機関たる国会及び国民一人一人の使命であると当委員会は確信する。

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