大阪における文化振興に向けて ~課題と対応策に関する提言~

芸術文化はそれを取り巻く社会的環境条件の変化の歴史的な積み重ねの中成り立っている。文化振興で求められるのは、点・線・面という三次元空間のみならず、歴史という時間の流れが積み重ね、未来に向かって再構築が持続していく現代の生活社会文化という背景を持った奥行きのある芸術文化振興の視座こそが求められる。大阪のまちが先人の汗と涙、生活の積み重ねの中で継承してきた都市文化の「正統性」を大切にしつつ、これからの世界を牽引する「昇龍」たるアジアの中に息づく現代都市「大阪」が未来に向かって都市魅力を創出しつづけられる、刹那的な文化の消費ではなく、持続可能な承継と発展が重要である。
一方で、芸術文化はそれを取り巻く社会的環境条件の変化中成り立っている。そして、文化振興行政の実効性と効率性を高めること、ガバナンスの再構築が求められていることも時代の要請である。前例のない自治体立アーツカウンシルが大阪で設立されることはその一環といえる。

アーツカウンシルには、まったく新しい取り組みであることから様々な期待と要請、制約条件が課せられる。アーツカウンシルは民主的正統性を確保しつつ、参加機会は広く公平に確保し、評価、効果測定、戦略性の視座を採りいれ審査等に取り組み、文化トータルで助成する。これによって文化芸術の振興による大阪文化圏の魅力創造と世界への発信に資することが期待されている。
先行する他のアーツカウンシルの取組や成果を見ると,審査や事後評価の仕組みを拡充するだけでは、あるべき姿にはほど遠いとされる。

  • アーツカウンシル側の組織マネジメントの透明性が重視される。
  • 芸術文化の公演団体の総務部門の基礎体力、すなわちアートマネジメントの育成の力量が問われる。
  • また、直接対話のフォーラム等を重ねること現場での活動実態の調査しつつ、一方で、文化の主役である市民の小さな挑戦への意欲や日々の努力が矮小化されないよう、幅広い人々の関心の喚起を持続させ、期待される活動を実現するため広く公募等を通じた人材の確保も課題である。
  • 政策機能、事業の検証評価機能等の位置付けとふさわしい組織の検討、 芸術文化活動への支援のあり方の検討、文化行政にふさわしいPDCAを確立する制度設計の検討、大阪の強みを活かす戦略の検討、機能・人選・予算規模別シミュレーション・利権化を防ぐチェックシステム等も求められている。

課題は山積している。

前例のない調査機関の例として国会事故調(国会東電福島原発事故調査委員会)がある。同委は約半年の調査活動を行い、2012年7月5日に国会両院議長に報告された。その内容はアメリカ科学振興協会(AAAS)がScientific Freedom and Responsibility Awardを授与する等世界で高く評価されている。アーツカウンシルは、議論プロセスに高い透明性・公正性の担保が求められること、膨大な検討作業が相互に連関・共鳴し、複線的に進行する点等でも、国会事故調の調査活動との近接性・類似性がある。国会事故調がその高い精度と公正性を実現した背景には以下の点がある。委員と統括責任者が一体となってアジェンダ設定・原案作成機能を掌握、チームと論点認識を共有し複雑なプロジェクトマネジメントを徹底したこと。また、委員会プロセスを公開・透明化を徹底する等調査プロセスのイノベーションを行ったことなどである。

アーツカウンシルが十分に期待に応えるには前例にとらわれてはならない。アーツマネージャーによるわかりやすい芸術文化的な視座での評価と公表、海外連携によるピアレビュー、市民参加型評価による透明・公平な評価審査プロセス、審査プロセスを広く公開し多くのアーティスト等の参画を確保し「芸術文化ウィーク」ともいうべきイベント化による様々な意見の吸収反映等、府民、市民、文化団体等の新たな活動の堀り起こしにもつながり民間の文化活動の活性化が図られる対応策は多様に検討可能だ。同時にアーツカウンシルが存在感を示し、有名無実化しないためには、実効的な予算措置と制度・機能設定が不可欠である。

 「大阪アーツカウンシル構想」へのご提言

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